新型コロナウイルス変異株

2021年4月16日

最近、新型コロナウイルス変異株が猛威をふるっています。感染力が強い、あるいは重症化率が高いなど、国民の不安は募る一方です。やっと、非常事態宣言が解除され、少しが自由な生活が送れるようになった矢先のことですから、ガッカリした方も少なからずいることでしょう。

そもそも何故変異が起こるのかと言えば、新型コロナウイルスも何とかして生き延びたいというあらわれなのです。身体の中で増殖しているうち、偶然にも肺の細胞や免疫細胞の弱点を知ったウイルスが生き残り、それが勢力を広めるのです。長く体内に留まることで、この能力を得る機会が増えると言われています。免疫力が弱い場合、駆逐するのに時間がかかります。この間に変異を起こす可能性が高まります。このことから、お年寄りや糖尿病、高血圧のみならず、ガンや免疫不全などの病気の方は予防に万全を期すべきでしょう。個人的にはワクチン接種も最優先にすべきと思っています。

東京都健康安全研究センター調べ  

下のグラフは東京都が発表した変異株の割合です。東京都の今月15日の新型コロナ感染者数は799人と、確実に増えています。大阪は更に多く、1208人に及んでいます。E484Kは南アフリカやブラジルで流行っている変異株で、N501Yはイギリスで猛威を振るった変異株です。

すでに東京は変異株に罹患する方の割合が70%以上を占めるようになっています。E484Kはワクチンに効き目が落ちることが危惧されています。またN501Y、従来型に比べ感染力が強いと言われています。当初従来型に比べ1.7倍、現在は1.3倍もの感染力の強さとされています。但し、この数値はそのまま受け止めて良いのやら迷うところです。1.7倍はイギリスのデータで、1.3倍は国立感染症研究所の発表です。となると、日本人は感染しにくいということになりますが、若年層の感染者数も増えていますので、厄介です。

但し、この数値の算出方法が解りませんので、私としては手探り状態です。経過が異なる2点での感染者数、つまり総患者数と変異型感染者数を比較する場合、3密状態やマスク着用率、気候や環境が密接に関与してきます。したがって、観察測定条件が異なるときは、これらの条件を無視して単純に比較しても意味がありません。1.7倍なのか、1.3倍なのかは別にして、実態として感染者数が急増していると表現した方が正しいのかもしれません。

特にこの時期は寒暖の差が激しく、自律神経系や免疫系の失調を起こしやすいと言えます。身体の恒常性維持能力が低下した状態で、個々の感染予防対策が甘いとなれば、患者の急増に拍車をかけます。

これから外気温や湿度が高くなる季節です。感染力が弱まることを祈るのみです。

いずれにしろ、感染予防は可能だと思っています。感染力が増えたからと言って、感情的に恐れることはありません。正しく恐れ、正しく感染予防することが肝要です。何度も言いますが、3密回避、マスク着用、手指の消毒をしっかり行えば、そう簡単に変異株でも感染することはないでしょう。

それと、もうひとつ、お出かけの際は、マスクの下で飴をなめてください。鼻呼吸にもなりますので、予防効果が高まります。ワクチンも期待されますが、感染予防が一番の蔓延抑制になります。

なお、感染者が極端に少ない山梨県ですが、トイレのふたをしめて水を流すということにも徹しているようです。確かにトイレは感染経路として重要です。

不特定多数の方が利用するトイレも、新型コロナウイルスだらけになったら困ります。トイレは換気しにくいスペースの上、感染者が咳をしたり排便したり、ボウルに唾や痰を吐いたりする可能性もあります。したがって、トイレ内ではマスクをはずさない、ふたをしめて流す、手指の洗浄も水を勢いよく流したら、コロナウイルスが混じった水が跳ね返ってくるかもしれませんので、流水量を抑え、ゆっくり満遍なく洗うなどの注意が必要です。

実際、新型コロナウイルスが入り込むレセプターのACE-2は、小腸や大腸にも沢山あります。肺や喉だけではなく、腸管に感染していることも十分に考えられます。学会の報告ではPCR検査で陰性となっても大便からは引き続きウイルスが検出されている事例もあるとのことです。下水のPCR検査をすれば蔓延状態が把握できるとの海外のデータがあるぐらいです。 そこで、当院でも用を足したら、ふたを閉めて水を流して頂くことをお願いしています。トイレの窓の開放、ドアノブのアルコール消毒、次亜塩素水噴霧による空間と床の消毒、貯水槽への次亜塩素、あるいはヨード系除菌剤の添加などを行っていますが、皆様のご協力を得て、更に強固な感染予防に努めます。