【脳梗塞】や脳出血の麻痺には脳の活性化が必要!

「活脳鍼」

脳卒中の後遺症に効果的

活脳鍼

脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血を総じて脳卒中と呼びます。脳卒中は老若男女、誰にでも起こり得る病気で、死亡率が高いという特徴があります。

また、生還しても、手足が動かせない、感覚がない、見にくい、飲み込めない、言葉が出ない、忘れっぽい、気持ちが晴れない、不眠気味といった後遺症に悩まされるケースが多いという重篤な疾患です。

回復への近道は脳を活性化することです!

当院では脳梗塞・脳出血・脳挫傷などの後遺症として発症する運動麻痺や感覚麻痺、痙縮、複視、同名半盲、言語障害、嚥下障害、高次機能障害などの改善に、「活脳鍼」と呼ばれる特殊な鍼灸治療法を用いています。

「活脳鍼」脳を活性化して、様々な脳卒中の後遺症に優れた効果を発揮します。初回から即効的に効果があらわれることも稀ではありません。

「微動だもしない手足が、ものの15分ぐらいの治療でスムーズに動かせるようになった」、「感覚が甦ってきた」、「続けているうちにモゴモゴせず即答できるようになった」、「眼球の位置が元に戻った」など、多くの方から喜びの声を頂戴しています。

きっと、リハビリ担当の医師も理学療法士も作業療法士も信じられないでしょうが、これらの体験談や臨床例は紛れもない事実です。

では、順を追って「活脳鍼」をご説明しましょう。

東洋医学は古くから脳卒中の治療をおこなう

東洋医学でも古くから脳卒中を重篤な疾患として捉えています。

1000年以上も前に書かれた様々な医学書に発症の原因から治療法まで詳細なる記述があります。

例えば、東洋医学の聖典と云われる「素問」には、「帝曰、人之肉苛者、雖近衣絮、猶尚苛也。是謂何疾。岐伯曰、栄気虚、衛気実也。栄気虚則不仁。衛気虚則不用、栄衛倶虚、則不仁且不用、肉如故也。人身与志不相有、曰死。」とあります。

つまり、脳卒中は、身体の機能が弱ったときに発症する。

あるいは、脳卒中は栄養の過不足や心身の疲労により、生体の恒常性を維持させる作用を持つ気血と呼ばれる一種のエネルギー体の循環が悪化したときに発症すると言っているのです。

更に肉体が強くても生命力が弱いと死んでしまうと付け加えています。

まさに脳卒中の恐ろしさをあらわしています。

その対策として、昔から鍼灸治療が果たす役割は大きく、鍼灸師のバイブル本と言われる鍼灸大成には、「乾坤生意 凡初中風,跌倒、卒暴,昏沈、痰涎,壅滞、不省人事、牙関禁閉、薬水不下。急,以三稜鍼、刺,手十指,十二井穴、当去,悪血。又治,一切暴死,悪候、不省人事、及絞腸、乃起死回生,妙訣。」
更に、「中風、風邪入腑、以致、手足不遂 百会、耳前髪際、肩?、曲池、風市、足三里、絶骨。凡覚、手足麻痺、或疼痛、良久、此風邪、入腑之候。宜灸?、此七穴。病在左灸右、在右灸左。候、風気軽減、為度」

意訳すると、乾坤生意という本には、突然中風に倒れ、意識なく、痰が気道を塞ぎ、人事不省で歯を食いしばり水も薬も飲めなくなったら、両指の先端にある10カ所のツボに鍼を刺し、滞った血を取ると、起死回生します。更に手足の麻痺や痛みが続くのは、脳卒中の可能性が高いので、症状が左にあれば右の、右にあれば左の百会、耳前髪際、肩?、曲池、風市などの7つのツボに症状が落ち着くまでお灸しなさいということになります。

他の項には、指や手首、肘などの屈曲伸展運動ができないときは外関や手三里、癲癇や痙攣があれば印堂、眼球が天井を向くようだったら?会、足の知覚麻痺があれば陽稜泉に鍼灸しなさい、更に症状に合わせて、手や足、背中のツボにも鍼灸しなさいと記されています。

当院では、「活脳鍼」を行う際、上記のような古典的な治療法も取り入れ、最善と思われる治療を行っています。

「活脳鍼」がダイレクトに脳に刺激を与え、更に脳の感覚野に手足末端からの刺激が伝わることで、運動機能の回復を早めるからです。

また、ご自宅でも家庭用のツボシールを「活脳鍼」のツボに貼ってもらい、その状態でリハビリをしてもらうこともお薦めしています。

「活脳鍼」のような強い刺激は与えられませんが、それでも手足の動きが楽になりますので、効率的なリハビリができます。

「活脳鍼」も同じように伝承医学の眼鍼を元に開発された鍼灸施術です。

では、その経緯をご説明しましょう。

活脳鍼について

活脳鍼は中国に伝わってきた眼鍼に、唇への鍼治療「唇鍼」を組み合わせた治療法です。

唇鍼は、私が独自に編み出した方法ですが、そのヒントとなったのが眼鍼です。

眼鍼は、その名のとおり、眼に鍼を刺す治療法です。

といっても、眼球に鍼を刺すわけではなく、まぶたのツボを用います。

鍼灸でまぶたに鍼を刺す治療法は、古くからありました。

明(14~17世紀)の時代に王肯堂が著した『証治準縄』に、三国時代の伝説的な名医である華陀の著書に「観眼識病法」と記されている、との記述があります。

華陀という名医が実在したことは確かですが、その著書が本当に明代まで伝わっていたかどうかはわかりません。

後世の医者が、華陀の名前を借りて書いたものかもしれませんが、まぶたのツボがかなり昔から知られ、実際の治療に用いられていたことは確かでしょう。

他にも、明代の『霊枢』という鍼灸医学書に、「全身の経絡をめぐる気血は、すべて顔面に集まり、耳や目、鼻といった穴を通り、その気血に含まれる陽気は目に入る。

陽気は活動の源となる」として、目が全身の機能をつかさどるコントロールセンターだと記されています。

ただ、こうした鍼法が、そのまま現代の眼鍼になったわけではありません。鍼法にはいくつもの流派があり、それぞれの鍼法が師から弟子へ、さらにその弟子へと、受け継がれてきました。

なかには秘伝として、一子相伝的にごく限られた人の間で伝わってきたものもあります。眼鍼もその一つです。

その眼鍼を発展させ、大きく世に広めたのが、現代眼鍼の創始者である彭静山先生(元遼寧中医学院教授・眼鍼研究室主任)です。

活脳鍼は目と口のツボを利用する

彭静山先生の教本、即ち眼鍼には片側8つのツボが目の周囲にあると記されています。

また、唇の周りも10か所のツボがることを当院が発見しました。

目の周りのツボを利用するのが眼鍼ならば、唇の周りでしたら唇鍼になります。

眼鍼だけでも相応の効果はありますが、唇の周りの10か所のツボも利用すると、更に効果がアップします。

活脳鍼は眼鍼の唇鍼を加えた鍼灸治療なのです。

これらのツボに鍼を刺すことで様々な病気を改善させるのですが、特に脳卒中の後遺症には活脳鍼が効くのです。

眼鍼の効果は驚くべきものでしたが、ペンフィールドの地図で唇の方が目よりも大きな比率を占めていることが解り、唇に鍼治療を行なえばさらに高い効果が得られるのではないかと考えました。

ペンフィールドの地図とは、大脳皮質の頭頂葉の感覚野を身体のどの部分の感覚を担当しているのかを、絵のような図にあらわしています。

この図を眺めると、唇の占める割合が大きいことに気づきます。 

そこで、唇付近のどこのツボに鍼を刺せば脳神経に効果的な刺激を与えられるか、いろいろ研究を重ねた結果生まれたのが、「唇鍼」です。

ペンフィールドの地図

脳と身体の各部位との関係を示す。

特に手や顔は胴体よりも遥かに大きな比率を示している

唇鍼は眼鍼単独の治療を遥かに上回る効果が得られており、今後、脳梗塞や脳出血の後遺症の治療に新たな可能性を開くものと自信をもっています。特に痙縮や異常反射がみられる場合には欠かすことのできない治療です。

したがって、この唇鍼と眼鍼を組み合わせた活脳鍼は、これまでの鍼灸療法にないまったく新たな治療法ということになります。

ですから、脳梗塞や脳出血の後遺症で鍼灸治療を受けたけど、全く効果が感じられなかったという方には、もう一度活脳鍼を試してみてくださいと力説します。

最近、いびきなどの治療のために、補装具を使って口の周囲にある口輪筋を鍛えると、右前頭葉の血流が明らかに上昇するという研究結果が発表されています。

また、ウインクすると脳の機能が活性化するといいます。

これは補装具で口輪筋に持続的な圧力が加えられたり、目の回りの眼輪筋に瞬間的な圧力が加えられたりすることで、その刺激が三叉神経を経て脳血管や脳細胞に好影響を与えるからでしょう。

口輪筋も眼輪筋も三叉神経支配にかわりはありません。

鍼による刺激か、補装具やウインクによる圧力かの違いはありますが、原理的には唇鍼と同じものであり、眼鍼や唇鍼の有効性を裏づける根拠の一つといえます。

目の周囲には、片側8つのツボがあります。

また、唇の周りには10か所のツボがあります。

これらのツボに鍼を刺すことで様々な病気を改善させるのですが、特に脳卒中の後遺症には目の外側と唇の周りにあるツボが効果的です。

脳梗塞や脳出血などの脳卒中後遺症に対する活脳鍼の効果は、きわめて高いものがあります。

脳卒中の後遺症で、何年来動かせなった肘が、わずか15分ほどの治療で曲げられるようになることは頻繁にみられます。

このような顕著な効果がみられるのは、けっして一部の特殊な症例だけに限りません。

大半の患者さんが、程度の差はあっても、初回の治療時に何らかの改善があらわれるのです。

長期間のリハビリでも効果がなく、患者さん自身が回復を諦めてしまったようなケースでも同じで、活脳鍼を続ければある程度まで手足のマヒが回復するのです。

なぜこれほどの効果があるのか?鍼灸はよく「経験の医学」といわれますが、経験の蓄積だけで成り立っているわけではありません。

当然、理論的な裏づけがあるのですが、その理論の根底には陰陽五行という中国の思想があり、現代科学の理論とは異なります。

近年、鍼灸の科学的な解明が進んでいますが、鍼灸全体からみればまだほんの一部に過ぎません。

ましてや活脳鍼は、鍼灸の中でもさらに特殊な治療法だけに、全てが解明されるのはまだまだ先のことになるでしょう。

そこで、「活脳鍼」の作用を脳波計や筋電図、光トポグラフィーなどの医療器を用いて科学的に調査しました。

脳波や筋電図にあらわれた活脳鍼の効果

脳梗塞や脳出血の後遺症で左側の手足が麻痺した数名の患者さんを対象に、活脳鍼治療前と治療後の脳波と筋電図を調べました。

鍼による刺激が脳に伝わり、それによって筋肉が動くのなら、この二つの検査で何らかの変化がみられると考えたからです。

目的は、「活脳鍼による刺激が脳細胞の機能を活発にする」という理論を実証することでした。

まずは筋電図です。

筋電図は筋肉が動く際に放出される微量の電流を測定する検査です。

したがって、脳からの命令が運動神経を介して筋肉に伝わり、その刺激で筋肉の収縮が起こり、放電量が増大するということになります。

こちらの結果は予想どおり、活脳鍼治療の前よりも後の方が、放電量が多かったのです。

実際に動作を観察しても、治療後の方が、肘関節の可動範囲は拡大していましたし、指や肘を曲げる運動も力強く、かつスピーディーになっていたのです。

これは多くの患者さんで共通していました。

次に脳波検査ですが、治療後直ぐに左右の前頭葉に相当する領域にもα波成分の増加が確認されました。

また、驚くことに次第に前頭葉から側頭葉にも顕著にβ波があらわれてきました。

背外側前頭前野は実際の行動に移るという意思の決定など、思考と連動した行動をする際の高次脳機能を持っています。

更に随意運動を担当する脳の領域と密接な関係があります。

つまり、背外側前頭前野は運動野を総合的に調整する領域なのです。

ちなみにα波はリラックスして精神活動が落ち着いている状態、典型的には座禅を組んで瞑想状態にあるときに出現頻度も量も多くなると言われています。

因みにα波とβ波の割合を調べたところ、α波の方が多い傾向でしたが、両方とも増加していていました。

まさに活脳鍼は脳を活性化する鍼灸治療と言えます。これも多くの患者さんにみられた傾向です。

光トポグラフィーにあらわれた活脳鍼の効果

更に活脳鍼を行ったときの脳血流の変化を調べました。光トポグラフィーとは、脳の血流状態を計測する医療器で、脳血流が増加すると赤色の画像になります。

逆に低下すると青くなります。

検査の結果、明らかに活脳鍼は脳血流を促進させる作用がありました。即ち脳の活性化が多くの患者さんで確認できたのです。運動機能の向上と脳血流の増加は、ほぼ比例関係にあることが、TMS(磁気刺激治療)などの治療結果からも現代医学的に証明されています。TMSは磁気刺激で脳血流を増加させる治療法で脳卒中の後遺症の他、うつ病対策にも応用されています。活脳鍼も同じような作用があります。但し、活脳鍼は活性化も鎮静化も可能ですし、同時に手足や体幹部にも鍼やお灸も行いますので、更に複雑な刺激を脳に与えることができるでしょう。

活脳鍼のうち、唇鍼を先に行うと脳血流が減少していく傾向がみられました。続けて眼鍼をすると、逆に脳血流の上昇が観察されました。唇鍼と眼鍼の順番を変ても同じような結果でした。複数の方に同じ傾向があらわれましたので、まず間違いありません。つまり、活脳鍼を行うことで脳の鎮静化と活性化が得られるのです。活脳鍼の手技は唇鍼から始めるので、眼鍼が終わるころには完全に脳は活性化しています。ここで言う活性化とは、機能的に均整の取れた状態を指します。

結果的に活動を高めたい脳領域には血流を増加させ、休息させたい脳領域の血流を抑制することになるのでしょう。不必要な脳領域まで活発に作動してしまうと、混乱が生じ、目的とする運動が出来なくなってしまいます。力の入れ方もアンバランスになってしまいます。脳は各領域が連携していますが、適宜主役とわき役を入れ替えて、正しく正確な情報が身体中に伝達できるようにしています。脳は働きすぎても疲労して機能が低下してしまいます。鎮静が必要なのは言うまでもありません。

普段この状態が維持できれば、フルに脳の機能が発揮できるのです。

いずれにしろ、詳細なる活脳鍼の作用はとともあれ、前頭葉の血流が増加したことだけでも運動機能が向上したのは間違いないでしょう。脳卒中の後遺症対策としてのTMS治療も血流増加を効果の指標にしているからです。

特に痙縮や痛み、しびれ、異常反射がみられるときは唇鍼の必要性に迫られます。これらの症状も麻痺した筋肉の問題ではなく、脳の過剰反応が原因だからです。

脳卒中の患者さんの多くが朝目覚めたときや欠伸をしたときに手足がスムーズに動くという経験をしたことがあると思います。その時、殆ど痙縮も痙攣も感じることはありません。おそらく、脳が鎮静化することによって過剰な防衛反応を発動させないからでしょう。これで脳卒中の後遺症の治療として、唇鍼の重要性がお解り頂けるはずです。

では、実際の「活脳鍼」の治療はどのように進むのでしょうか。下記をご参考にしてください!

活脳鍼の治療の実際

1.先ずは問診、次に脈診や舌診などの東洋医学的検査をします。

特に脈診は重要です。

2.手足の動きを確認します。

3.いよいよ施術です。先ずは健側の手足や胴体のツボに鍼を刺します。

健側の脳が過剰に働き過ぎていることが多いので、まずは健側に抑制刺激を与えます。

刺した鍼の上から電動マッサージ器で硬直した筋肉に振動を与えることもあります。リハビリマッサージ時に行う電動マッサージ器による刺激よりも効果的です。

このことは経験的にも知られていますので、古典の鍼灸治療でも同じような施術を行っています。

4.次に活脳鍼です。顔や頭に鍼を刺します。

場合により、耳や後頭部のツボも追加します。

5.微弱な電流を流します。

経頭蓋直流電気刺激(tDCS)と呼ばれています。

非常に微弱な電流なので、体感できませんが、生体は感じ取っています。

6.15~20分後、活脳鍼以外の鍼を抜き、小さなお灸、あるいは電子灸をします。

お灸といってもチクチクする刺激を感じるはずです。

知覚麻痺の場合、四肢末端への刺激は効果的です。

光トポグラフィーでも、指の先端にお灸をすると、一瞬で画像が真っ赤になります。

電子灸も同じような体感で同じような効果があります。

指先へのお灸を併用

人間は道具を使うことが脳の容積を増大させたことはよく知られています。

ペンフィールドの地図をみても、指は顔の占める割合は大きく、指への刺激が脳に大きな影響を与えることがわかります。

活脳鍼は、こめかみや唇への鍼治療によって健側の脳の過剰反応を抑制するとともに、運動機能を活発にします。

また、患者さんの状態によっては、指先に小さなお灸を行ない、脳への刺激をいっそう強化する場合もあります。

この刺激伝導路は、脊髄を通り脳の運動野に達するという通常の鍼灸理論で説明できます。

用いるツボは、古くから体のマヒに効果があるとされてきた十宣(じゅっせん)です。十宣は、左右の手指合計10本の先に一つずつあり、10本の指に同時に鍼やお灸をすることで効果を発揮します。

実際、光トポグラフィーを用いた検査でも、十宣への小灸は前頭葉の血流を高めていました。

しかも数分に渡り持続していました。

手足の他のツボでは一瞬で血流の増加が認められなくなりましたので、十宣への小灸は十分利用価値があります。

過剰に働いている健側の脳を抑制

活脳鍼をにおける手足の鍼治療は、最初に健側の脳に刺激が伝わるようにします。つまり、非麻痺側の手足から鍼を刺入します。お灸も同じです。顔面への鍼、即ち活脳鍼も同じような考え方で行います。したがって、この場合は麻痺側の顔になります。顔面は脳神経の三叉神経や顔面神経ですので、刺激は同側の脳に伝わります。麻痺側でも健側の脳に響くのです。ここが手足や胴体と異なるところです。

これを考え付いたのは、長い東洋医学の経験から得られた知恵が元です。

脳卒中の後遺症対策で中風7処穴という灸治療が伝承されていますが、先ずは健側のツボから始めると指南しています。その方が効果が上がるとのことです。

この手順が脳にどのような影響を与えているか定かではありません。少なくとも脳血流や脳波ではつかめません。最初に活脳鍼で健康な脳に刺激を与えても、障害のある脳に刺激を与えても、前頭葉の血流や脳波は殆ど差異がないからです。つまり右目の周囲のツボに鍼を刺しても、左の目の周囲からでも脳梁を介して一瞬にして両前頭葉の血流が増加しますし、次第にα波もβ波も同じようにあらわれます。

とはいえ、この順番で鍼灸治療を行った方が効果的です。東洋医学は遥か昔に確立しましたので、まずは古人の教えに従うことが治療成績の向上につながるのです。

このように経験的な鍼灸の手法は臨床では大きな成果を上げていますが、裏付けをとるのは困難です。最初に健側に刺激を与えるという経験的な手法は脳の他の部分、あるいは脊髄路に影響を与えるのかもしれません。

いずれにしろ、健側の脳への刺激は、結果的に患側の手足の運動を活発にしますし、感覚も鋭くします。この感覚が蘇るという点だけは最初に健側の前頭葉に刺激を与えた方が顕著にあらわれます。触覚や圧覚、痛覚の感度が高まることが多くの症例で確認できたからです。このことは非常に興味深く、大いに臨床に活用できるので、今後も機序を追究するつもりです。

最近、健側の脳から患側の手足に新たな神経伝達路が形成されるとの報告があります。この経路が回復の妨げになっている可能性が高いと考えられます。代償作用で健側の脳が過剰に働き不適切な刺激が伝わるのではないでしょうか。増してや患側と健側の脳で片側の手足を動かすという状態は不自然です。この解決策としてTMSでは最初に健側の脳に電磁波の刺激を与えているようです。何か中風7処穴の教えに似ています。

恐らく、相対的に障害のある脳の機能低下が抑えられるのでしょう。最初に与える強い刺激は抑制的に作用することが知られています。過剰に働いている非障害脳の機能を抑えて、障害のある脳の機能を高める、脳血流や脳波では説明できない機序があるのでしょう。

更に痙縮や異常反射が強い場合は背部や肩、腹部、手のひら、指への鍼やお灸も追加します。これも健側の網様体脊髄路や赤核脊髄路への刺激が過剰に反応している健側の脳を抑制すると考えています。

痙縮やシビレが強ければ、耳や後頭部のツボも利用します。迷走神経や後頭神経に刺激が加わります。

その他にも脊椎関節のくぼみに反応点を求め、施灸することもあります。痙縮や痛みしびれを解消させるのに非常に効果的です。

後遺症による麻痺の回復は、早期のリハビリが理想

実際には使うツボが全身に渡るので、鍼もお灸も多くなりますが、鍼もお灸もそれほど辛いものではありません。

顔に鍼を刺しても、痛みを感じない方が殆どです。

お灸が恐ければ、一瞬で熱さを感じなくなる電熱治療器に換えますので、ご心配いりません。

脳梗塞や脳出血の後遺症は損傷を受けた脳野により様々な症状を呈します。

身体の運動麻痺や感覚麻痺、言語障害、嚥下障害、めまい、複視、同名半盲、うつ、認知機能障害など色々です。

最もよくみられるのが麻痺です。

今までの臨床からどの症状にも活脳鍼は一定の効果をしめしていますが、なかでも活脳鍼が最も効果を発揮するのが、手足などの動麻痺や感覚麻痺なのです。

一般に後遺症による麻痺は、発病後1か月までに動くようになるかどうかが、回復の目安とされています。

回復のスピードは、発病後3週間ほどまでは急速に、それから約3か月まではやや回復の速度がにぶりますが、それでもかなりの改善が見込めます。

また、それ以降、およそ3年まではある程度回復するといわれています。

とくに手指については、発病後2週間以内に少しでも動くようになれば、最終的には元通りに動くといわれています。

機能の回復をはかるうえで、最も大切なのは少しでも早くリハビリに取り組むことです。

動かなくなった状態のまま時間が経過すると、関節や筋肉の拘縮(こわばり)が進行して、回復が遅れたり、最悪の場合には回復が望めなくなってしまいます。

活脳鍼の場合、発病後長期間たった患者さんでもある程度の回復が見込めますが、それでもやはり早い時期に治療を始めたほうが高い効果が得られます。

2006年の診療報酬改定によって脳卒中のリハビリは、最大でも180日間までしか保険が適用されなくなってしまいました。

前述のように発病後3年程度までは回復が見込めるのに、保険が半年しかきかないというのは如何なものでしょうか。

患者さんとしては保険が使える間に回復をはからなければ、膨大な治療費を払うか、リハビリを諦めるしかありません。

ただ、脳梗塞や脳出血の後遺症の運動麻痺に対するリハビリは、いったん動くようになれば、あとはその訓練を続けることで確実な機能の回復・向上が見込めます。

問題は、動くようになるまでに時間がかかることと、繰り返し行なうリハビリにかなりの忍耐と苦痛を感じるということです。

その点、活脳鍼は症状によって程度の差はありますが、治療の初期から、麻痺した部分が動くようになります。

勿論、強い痙縮や拘縮があれば、僅かな動きしか感じられないでしょうが、それでも活脳鍼や通気法によるリハビリマッサージを続ければ痙縮の緩和はみられます。

ボドックスとは異なるので、何度も受けられますし、治療による筋力の低下もみられません。

患者さんにとって、それだけリハビリがスムーズに運ぶわけで、脳卒中の後遺症の治療上きわめて大きな役割を果たすことができるのです。

活脳鍼と併用してリハビリを続ける方も数多くいます。

「活脳鍼」は脳梗塞や脳出血の後遺症に効果を発揮しますが、途中で断念しては元も子もありません。

但し、脳卒中の後遺症は簡単に改善するわけではありません。天下の大病院でリハビリを受けても、すんなり回復する方は稀です。

もし、跡形もなく回復できたとすれば、 脳の損傷の程度が軽いか、後遺症を残しにくい部位だったのでしょう。

活脳鍼は初回の治療で、大なり小なり手足の動きの改善がみられますが、それが日常の動作に変化を与えるまでには時間がかかります。

全身の筋肉の連係プレーでスムーズな運動ができるようになるからです。

最初は大きな筋肉、次に中小の筋肉の動きを高めることが必要なのです。

それで初めて納得の回復が実感できるのです。

活脳鍼の場合、初回の治療で大きな筋肉の動きに改善がみられるようです。

そのためには数回の治療で効果の程を判断し、はっきりしないから諦めるということがあってはなりません。

特に痙縮や感覚異常があれば、長引くのは当然です。

筋肉の緊張をほぐし、異常な感覚修復しないと、自然な動きは取り戻せないのです。

また、活脳鍼を続けていると、シビレが痛みに変化したり筋の緊張が強くなったりすることがあります。

これは感覚神経や運動神経に変化が起きたことで、回復の兆しとも言えます。

多くの場合、これらの症状は一過性で、そのあとに大きな改善がみられるからです。

遠方の方に朗報、電子活脳鍼

活脳鍼の治療を受けられる方は、関西や九州、沖縄、東北、北海道など、遠方からもいらっしゃいます。

多くの方は1週間から2週間東京に滞在して、1週間に3回度ほど来院します。

当院としましては非常に有難いことですが、貴重な時間と余計な旅費も加わりますので、申し訳ない気持ちにもなります。

そこで、自宅でも行える活脳鍼として、電子治療器を利用した治療法も開発しました。

是非、電子活脳鍼もご活用ください。

着実な効果が回復のための好循環を生む

多くの場合、鍼灸の治療は、効果は3日くらい続きます。

したがって、前回の治療から4日くらいたったときに次の治療を受けるパターンが最も効果的です。

活脳鍼の場合も同じことが言えます。

ただ、効果の持続期間が比較的長いので、患者さんの状態にもよりますが、1週間に1回程度の間隔で治療を受ければ十分です。

むしろ、いたずらに治療回数を増やすよりも、治療と治療の間にリハビリを十分に行ない、治療で動くようになった手足の機能を維持することが重要になります。

それによって、次回の治療では次の段階に進めます。

もし患者さんが、この間の、リハビリを怠ると、関節や筋肉が元の状態に戻ってしまい、治療効果が薄れてしまいます。

私の仮説はさておいて、一般的に脳卒中による麻痺が長引く理由は二つあります。

一つは脳細胞の壊死によって感覚・運動中枢が機能しなくなること。

もう一つは、体を動かせないために関節がこわばったり筋肉が萎縮したりして、手足の機能自体が衰えてしまうことです。

活脳鍼は脳の働きを活発にして、関節や筋肉に「もう動かせます!動かしなさい!」と命令させることで手足の麻痺を治す治療法です。

しかし、手足が動かない状態のままでは、いくら脳の機能が元に戻っても、麻痺は回復しません。

無理なリハビリを行なう必要はありませんが、少しずつでも動きがよくなるように努めることが、活脳鍼の効果を最大限に生かすポイントなのです。

治療と治療の間にリハビリをしっかり行なえば、活脳鍼によって麻痺は確実に改善するはずです。

そして、少しでも回復すれば、それがリハビリの励みになり、さらに回復が早まるという好循環をもたらします。

この好循環を生み出すことにこそ、活脳鍼の最大の魅力があるといえるでしょう。

特に若い脳梗塞や脳出血の後遺症の患者さんは前途を愁い、うつ気味になっています。

これでは脳の伝達ホルモンの分泌が低下して、回復への悪循環になってしまいます。

活脳鍼で少しでも手足が動いたら、明るい希望を持ってリハビリに努めるべきです。

アセチルコリンどころか、セロトニンもアドレナリンもドーパミンも増えてきて回復にはずみがかかるでしょう。

現に左脳の血流を高めることがうつを回復に向かわせるというTMSを利用した調査で明らかになっています。

活脳鍼で積極的に左脳の血流を高めることでTMSと同じような効果がみられています。

治療に使用する日本鍼の特徴

初めて眼鍼を見たときに、太い鍼を患者のまぶたに何気なく刺入する恩師の手腕とともに、黙って痛みに耐えている患者さんにも驚いたものです。

中国では鍼治療が医療全体に占める割合が大きく、緊急を要する患者さんも治療対象となることが少なくありません。

それだけに強い効果をもつ中国鍼が必要なのかもしれませんが、日本では医療制度の制約などもあって、そのようなケースはありません。

基本的に、患者さんに痛みを強いてまで、強い効果を求める必要がないのです。

私が実践している活脳鍼、並びに手足に刺す鍼は殆ど痛みを感じません。

感じたとしても耐えられる程度です。

この理由は鍼の太さにあります。

日本の鍼は細くて柔軟ですが、中国の鍼は一般的に太くて長く硬いといわれています。

日本では髪の毛の太さに近い0.16~0.18mmの太さの鍼が使われるケースが多いのです。

中国の鍼も最近は細くなってきましたが、それでも0・3㎜前後で、日本の二倍近い太さです。

日本の鍼が細くなったのは、鍼を刺すときの痛みを可能な限り軽くするためです。

中国の人が昔から太い鍼に慣れているせいかもしれませんが、これまでの私の経験では日本人は中国人よりも痛みに敏感なようです。

いくら効果があっても、患者さんが痛みを嫌って治療を受けないのでは役に立ちません。日本の鍼法が、痛みの軽減を優先してきたのもそのためです。

とくに活脳鍼の場合、敏感な顔面に鍼を打つので、痛みをできる限り軽くすることが大切になります。

活脳鍼が日本鍼を使う理由は、もう一つあります。

それは、人間というものは、次第に刺激に慣れてしまうということです。

患者さんが鍼の痛みに慣れてしまえば、次にはそれまで以上の刺激を与えなければなりません。

その際、最初に強い刺激を与えてしまうと、刺激量を増やすことが難しくなります。

その点、痛みがほとんどない日本鍼なら、効果が薄れてきたときでも柔軟に対応ができます。

痛みの少ない治療をめざしてきた日本の鍼法のよさは、こうした点にもあるのです。

そこで、眼鍼を日本で広めたいと考えたとき、私がまず最初に考えたのが、日本の鍼で中国鍼と同じ効果が得られるかどうか、得られるのであれば日本鍼を使うべきだということでした。

そして、その後、数多くの症例を経験するなかで、日本鍼でも同等の効果が得られることがわかり、眼鍼に唇鍼を併用する活脳鍼を編み出した際にも、安心して日本鍼を使うことができたのです。

安全な鍼を使用 

当院で治療に使用している鍼は様々な形や太さ、長さのものがありますが、全て滅菌された使い捨てのディスポ鍼です。

当然、使い捨てなので、使用後は廃棄してしまいます。

したがって、病原菌や肝炎ウイルス、エイズウイルスなど、鍼からの感染リスクはありません。

安心してご来院ください。

実際には使うツボが全身に渡るので、鍼もお灸も多くなります。

また、お灸もそれほど辛いものではありません。

顔に鍼を刺しても、全く痛みを感じない方もいます。

お灸が恐ければ、一瞬で熱さを感じなくなる電熱治療器に換えますので、ご心配いりません。

なお、引き続きリハビリ・マッサージを行うことをお勧めします。

脳の運動野が活性化しているうちに通気法によるリハビリ・マッサージを行うと、非常に効果的だからです。

通気法リハビリ・マッサージ

リハビリ・マッサージで関節の動きをなめらかにする!

当院のリハビリ・マッサージは脳梗塞や脳出血の後遺症対策に特化しました。

出血などの脳卒中の後遺症で固くなった筋肉を柔らかくしたり、可動域が少なくなった関節の動きをスムーズにします。

また、脳卒中の回復の最大の妨げとなる痙縮の緩和にも役立ちます。

また、ジャックナイフ現象も日常の生活を困難にさせます。

この原因として考えられるのは脳の運動野のバランス異常です。

多くは健側脳の過剰な干渉と思われます。

活脳鍼は刺すツボや順序を変えることにより、健側の脳の興奮を抑制させることが示唆されています。

活脳鍼との併用で、多くの方が肘を伸ばせるようになったと喜んでいます。

※本ホームページは顧問医の監修のもとに制作されました。