2020年11月24日
5月の日本の新型コロナ感染による死亡者は10万人あたり0、56人といいます。ところが、その後新型コロナウイルス武漢型が鳴りを潜め、ヨーロッパ型が流行するに至り、新型コロナ肺炎による死者が急増しました。それでも世界的にみると死亡率は低めです。これは治療技術の向上はさることながら、政府の要望に沿った国民の対応が従順であったことが最大の理由と思われます。自粛やマスクや手洗いが功を奏していることは間違いありません。感染者数が少なければリスクの高い高齢の方の罹患率も低下します。結果、死亡率も下がるということになります。ところが、11月に入り第3波が押しよせてきました。特に連日東京や大阪、北海道の患者数は記録更新です。冬場のパンデミックが危惧されます。 そこで、何故自粛やマスクや手洗いが効果的な予防策になるかについて、様々な文献を元に、更に踏み込んで考察してみました。これは、新型コロナの予防として自然免疫の強化が必要と前回のブログに載せましたが、その続きになります。では、新型コロナに罹患しやすい人や、逆に罹患しにくい人、あるいは軽症の方も重症になってしまう方もいますが、その違いは何でしょうか。
自然免疫を司るマクロファージなどの免疫細胞は、相手が未知の病原体であっても怯むことなく貪食により駆逐します。新型コロナウイルスであっても同じです。但し、相手の数が少なければ絶大なる効果を発揮しますが、数が多くなると手に負えなくなってしまいます。元々マクロファージなどの免疫細胞の数が少ないということと、活性化しにくいということが考えられます。空気中には様々な病原体が浮遊していますし、当然新型コロナウイルスも交じっています。でも、数が少ないので、この程度では罹患することはありません。例え凶悪なコロナウイルスでも駆除できる範囲内なのです。ですから、電車の中も街角、公園にも新型コロナウイルスは漂っています。でも、そう簡単には感染、発症ということにはならないのです。
ところが、数が多くなると自然免疫だけでは太刀打ちできません。どうしても抗体の助けが必要になるのです。抗体は標的を狙い撃ちして、感染力を奪ってしまいます。自然免疫は一騎打ち、抗体は機関銃と言ったら、解り易いかもしれません。3密状態は新型コロナウイルスが大量に空気中に存在しています。また、マスクをしないと、1回の咳で3000個、1回のくしゃみで4万個近く排出されるそうです。これでは強力な自然免疫をもってしても勝てません。
このことを如実に示したのが、新型コロナ患者の治療にあたっているアメリカの医療従事者の抗体検査です。マスクを着用していない医療従事者と、着用している医療従事者の新型コロナウイルスの抗体を検査したところ、両者とも抗体値は上がっていたので、間違いなくコロナウイルスとの闘いは起きていました。ところが着用している医療従事者は殆どコロナに感染しなかったそうです。つまり、マスク着用によりのウイルスの吸い込みが少量になり、自然免疫で十分に駆除できたということです。一方のマスクをしなかった医療従事者の多くは発症してしまいました。当然、抗体値はマスクを着用している医療従事者よりも高かったそうです。実際、日本が世界に誇るスーパーコンピューターの富岳を利用した調査によると、不織布は飛び散る飛沫の8割、綿は7割抑えることが判明しました。健康人と感染者の両方がかければ、ほぼ完ぺきな感染症対策になります。
抗体は出来るまでに相応の時間がかかります。B細胞は病原体ごとに弱点を見つけ出し、それに対応する抗体をつくります。かつて造ったことのある抗体でしたら、既に鋳造のようなものがありますので、直ぐに抗体の増産に踏み切れます。毎年流行するインフルエンザでしたら、3~4日あれば十分です。ところが、新型コロナウイルスのような未知の病原体ですと、更に日数がかかってしまいます。そうなると、肺どころか身体全身に伝搬し、生命力が乏しいと命を落とす危険性が高まります。新型コロナウイルスはACE-2という細胞の扉のような役目を持つレセプターと結合して、鍵を開けるかのようにして中に入り込みます。ACE-2レセプターは肺でだけでなく、血管や腎臓、脳にもあります。様々な後遺症を残すのも、このためです。
また、免疫機構がフル活動すると、過剰な防衛反応を起こすこともあります。つまり、正常な組織まで攻撃してしまうことがあるのです。これが新型コロナウイルスによる間質性肺炎です。免疫系の暴走と言えます。
そこで、若い人や子供は新型コロナウイルスに感染しても不顕性で、軽症のままで治ってしまう事例が多いようですが、これは恐らく自然免疫が強く、かつ獲得免疫が直ぐに働きだすからでしょう。特に幼児や子供は優れた獲得免疫システムが作動し、直ぐに十分な量の抗体を作り出すようです。抗体はウイルスの膜に付き、不活性化させます。コロナウイルスは表面には幾つもの反応手があって、それが正常な細胞に入り込む鍵のような役割を果たします。その鍵を不活性化するのですから、最終的にはマクロファージなどの免疫細胞に食べられる運命にあります。若年者は知らぬ間にウイルスに打ち勝っているのです。ところが、高齢者は加齢とともに自然免疫も獲得免疫も弱まっています。これが高齢者に死亡率の高さに深く関わっているのでしょう。
また、最近、新型コロナウイルスは動脈の内皮細胞を攻撃し、血栓を造りやすくするとの研究データが報告されています。多くの高齢者は顕著な動脈硬化がありますので、この現象に拍車をかけるのは必至です。このことからも高齢者の死亡率の高さが窺えます。また、糖尿病や高血圧症、虚血性心疾患を罹患している方に死亡率が高いという報告もありますが、恐らくこれらの疾患は動脈硬化を進行させやすいからでしょう。血管の機能が衰えていなければ、死亡率が増えることはないはずです。死亡率の高い高齢者に糖尿病や高血圧症、虚血性心疾患が多いと考えれば、納得できます。ですから、40~50代の脳梗塞や脳出血の既往歴のある方が新型コロナに感染したら死亡しやすいということはないと思います。まだまだ深刻な動脈硬化はみられないからです。とにかく強い免疫力は若さの特権ですが、中高年齢者や持病のある方にうつさないように切にお願いする次第です。
以上のことを踏まえ、新型コロナウイルスの感染予防を考察してみます。となると、やはり自然免疫を強化するのが、ベストな感染予防法と言えます。発症することなく抗体をつくる、自然免疫が強ければ、この可能性が高まるのです。人間の目がミクロの世界も見渡せたら、どこに大量のウイルスが飛んでいるか、また数えられる程度のウイルスでしたらそこら中でいることが解るでしょう。
我々は3密状態に注意しても、通勤電車や社内、家庭、公園などで少量の新型コロナウイルスに暴露されているのは確実です。それでも自然免疫で処理できるぐらいの数でしたら、何の心配もいりません。それどころか、その経験が何度も重なれば、壮烈な戦いはせずに抗体が作れ、鋳型も出来るので臨機応変に抗体の増産も可能になるかもしれません。今、ワクチンの開発が急がれていますが、これも新型コロナウイルスの情報をB細胞に知らしめることで、抗体を作るようにします。但し、現在の新型コロナウイルスの情報なので、数か月経過すれば変異を起こす可能性が高くなります。果たしてどの程度効果がみられるか、疑問が残るところです。
現在日本で流行しているウイルスは武漢で発生した初期のものと差異があり、ヨーロッパやアメリカで猛威をふるっているものです。たかだか数か月でウイルスの遺伝子が変異を起こしてしまうとは、正直驚いています。
ところで、以前オーストラリアの学者がBCGの接種率が高い国は感染者も死亡者も少ないと発表しました。確かに世界地図で色分けすると、BCGの接種を国策としている国の方が、罹患率も死亡率も低い傾向にあります。日本も韓国も中国もロシアもASEAN諸国も人口10万人あたり死亡者は0、3~0.4人といいます。中国の統計は疑わしいところもありますが、ほぼ近い数値でしょう。逆にBCGを義務化していないイタリア、スペイン、オランダ、アメリカは軒並み死亡率が高いようです。ポルトガルはスペインのお隣なので人の往来も多く罹患者も死亡者も急増してもよいのですが、実際は大したことがありません。どう考えても不思議なのですが、確かにポルトガルはBCGを義務化しているとのことです。こうなると、オーストラリアの学者が言うのも、まんざらではなさそうです。
但し、それだけではなく、BCGの種類によっても傾向が一致しないようです。イランのBCG接種率は高いのですが、多くの方が亡くなっています。その対岸のイラクを真逆の死亡率です。イラクは日本のBCG株を利用しています。日本のBCGには無毒化した生菌が含まれているとのことです。無毒化したBCGと言えば、年配の方なら丸山ワクチンを思い出すかもしれません。日本医科大学の丸山千里先生が製造した免疫系の抗ガン剤です。結核患者にはガンが少ないということが開発のヒントになりました。
このBCGですが、明らかに結核に対抗する力はありますし、そればかりか自然免疫を強化するとも言われています。自然免疫とはマクロファージや樹状細胞、NK細胞がウイルスに侵された細胞やガン細胞を貪食して増殖を未然に防ぐのです。当然、自然免疫ですので、未知の病原体でも駆逐できます。新型コロナウイルスも十分処理可能です。このBCGの作用ですが、訓練免疫という新しい免疫システムの概念を提唱している学者もいます。自然免疫システムが強化され、スムーズに病原体を駆除するとのことです。以前、元東京医科歯科大学教授の藤田先生も回虫など寄生虫を体に飼っていると、インフルエンザなどの感染症やガン、様々なアレルギー疾患に罹りにくくなると説いていました。昨今、有益な乳酸菌が腸内フローラを構成していれば、免疫増強に役立つというというデータも発表されています。これらは同じメカニズムと考えられます。
但し、BCGの作用は非特異性なので、誰にでも効果があるとは言えません。上手く反応してくれないと、まったく効果はみられません。同じようにワクチンもウイルスの基本的な遺伝子は変化しないので、多少の変異ぐらいでしたら効力に問題はないとの見解を述べる学者もいるのは事実ですが、現在は判断に苦しみます。丸山ワクチンも同様で、ここが再現性のある抗ガン剤とは異なるところです。日本ではBCGを接種していない方は70歳以上に多いのですが、前述した動脈硬化の進行も相まって高齢者に新型コロナウイルスによる死者が多いのではないかと推測するのは私だけでしょうか。
では、結論として感染予防は、マスクの着用、3密回避、少人数かつ小声での飲食が筆頭に挙げられますが、自然免疫をアップすることも効果的です。
その方法ですが、快食快眠快便の他、適度な運動、ストレス除去など、基本的な健康法になります。その他、ビタミンCやD、乳酸菌、キノコの摂取も役立ちそうですが、再現性が確認できませので、積極的におすすめするほどではありません。
そこで、当院として責任を持っておすすめする予防法としては、外出の際は飴をなめることです。できるだけ酸味のある飴が好ましい。唾液を一杯出して欲しいからです。唾液には自然免疫物質と言えるIgAが含まれているからです。IgAはウイルスなどの異物と反応して無毒化します。また、唾液にはリゾチームなどの抗菌抗ウイルス物質も含まれています。更に粘液が口腔の粘膜にウイルスが付着するのを防ぎます。唾として飲み込めば新型コロナウイルスでも胃酸で溶けて単なるタンパク質に変わってしまいます。梅干し飴、見ただけでも唾液が溢れてきます。 それともうひとつ、お灸です。お灸による熱刺激はマクロファージや樹状細胞などの自然免疫細胞を増やしたり、活性化させたりすることが知られています。ほぼ全員に効果があらわれますので、再現性は十分です。特に足や手の三里、合谷というツボにお灸すると効果てき面です。
治療家も生身の人間ですのでインフルエンザにかかることもありますが、急に治療院を休むことはできません。そのとき足や手の三里、合谷へのお灸が強い味方になります。体温も上がり、免疫機能がフル活動します。夜何度か大汗をかけば、翌日は平熱に戻るばかりか、咳もくしゃみもでません。自然免疫を強化して1晩で発症を抑えるのです。葛根湯を併用すれば、更に効果的です。
実は東洋医学による風邪に対する治療は古くから行われています。鍼灸では足や手の三里の他に、風池や肺兪、大椎などのプロ仕様のツボが鍼灸の古典医薬書に乗っています。漢方薬でも風邪に対する処方は沢山あります。葛根湯は有名ですが、その他に桂枝湯や麻黄湯、この両方を混ぜた桂枝麻黄各半湯、小青竜湯、香蘇散、参蘇飲、銀翹散、竹筎温胆湯、麻黄附子細辛湯などなど数え上げたらきりがない程です。中には玉屛風散という中国で盛んに新型コロナ対策に用いられた漢方薬もあります。抗生物質がなかった昔は、肺炎で死亡する人間が多く、悪化する前に風邪の漢方薬を飲むことで小難に抑えたのです。したがって、東洋医学による風邪対策は重篤な肺炎になる前でしたら、西洋薬に勝るとも劣らない効果を示します。 そこで、お灸なのですが、素人でも簡単にできる製品が販売されています。代表的なのは千年灸やカマヤミニです。千年灸はもぐさの量が少ないので、もぐさの精油成分の作用はあまり期待できません。但し、広範囲に温熱刺激が与えられるので、多少ツボがずれても効果があります。また粘着面が広いので途中で落ちる心配はありません。一方のカマヤミニはもぐさの量が多くピネンなどの精油成分を皮下に浸透させる作用に優れています。但し、皮膚との接着面が小さいので、不用意に触れると落下してしまうこともあります。個人的には効果の面からカマヤミニを選択したいのですが、千年灸の方が使いやすいかもしれません。
当院では治療は勿論のこと、予防にも努めていますので、ご希望に応じて風邪予防のお灸も行います。勿論、そのための料金は頂きません。どうかこの冬もお元気にお過ごしくださるように、お身体ご自愛ください 。